肌老化の8割は紫外線が原因?人種によっても違う「シミ」や「シワ」
「肌が老化する原因の8割は紫外線によるもの」
大手化粧品メーカーや新聞のホームページで、こんな内容の記事をたびたび目にします。もし紫外線にさらされなければ、若いときの肌を維持できるというふうにも読めますが、8割の根拠がよくわかりません。
たしかに、日光にさらされつづけている顔、首筋や手の甲などと比べ、二の腕の内側、太ももの内側など、太陽の紫外線を浴びることが少ない部位は、若いときと同じような肌理(キメ)の細かさを維持しているような気がします。
しかし、よくよく見れば、ふだん日光にさらされることが少ない部位でも、20歳のころのハリや弾力は確実に失われつつあり、乾燥した感じも。
肌老化の8割が紫外線の影響ということは、加齢による肌老化が2割ということになるわけですが、30代、40代、50代ともなれば、どう考えても年齢の影響が2割ではすまないように思えてなりません。
加齢にともない、肌が乾燥しやすくなり、小じわも目立つようになりますが、これは顔などの普段から露出している部位にかぎりません。アラフィフともなれば、二の腕の内側や太ももの内側の皮膚をつまめば、乾いた感じの小じわが。
そう考えると、ある程度の年齢になれば、日光の紫外線の影響を受けない部位でもスキンケアが欠かせなくなります。
そもそも紫外線は、肌に対してどのような影響があるのでしょうか。
日光の紫外線が肌に与える影響について
日光から降りそそぐ紫外線にはいくつかの種類がありますが、地表までとどいて肌に影響をあたえるのは、「UV-A」と「UV-B」。
真夏の強い日差しのなか、短時間の海水浴などで、日焼け(サンバーン)や炎症をおこすのは「UV-B」のしわざ。ただし、「UV-B」は、肌の奥深くまではとどきません。
「UV-A」は、表皮を通過して真皮層までとどき、短期間で肌にダメージをあたえることはありませんが、40代からのシワやたるみなどの光老化の原因になります。
「UV-A」がやっかいなのは、曇り空やふつうの窓ガラスではさえぎることができないこと。つまり、室内にいても紫外線にさらされることになります。窓を閉めていても、屋外とくらべ約80%の紫外線を浴びてしまうとのことですから要注意。
「UV-A」によってシワやたるみができるのは、真皮層のコラーゲンに影響を与えるためですが、さらにメラノサイト(色素細胞)が刺激をうけるため、メラニン色素が過剰に生成され、シミの原因になります。
このような事実を踏まえれば、「肌老化の8割は紫外線が原因」との説に説得力があると言えるでしょう。
「肌老化の8割は紫外線が原因」の根拠は?
「肌老化の8割は紫外線が原因」説は、いまでは美容業界や化粧品メーカーだけでなく、医学やメディアのあいだでも常識になっているようです。
しかし、「8割」の根拠となる研究論文などは見つけることができませんでした。そこで、NLM(National Library of Medicine(米国国立医学図書館))のHPから、肌老化に関連する「80%」を含む記事を検索しました。
その結果、最新の記事がこちら。
Research shows that UV exposure is the reason behind 80% of your skin’s aging.(研究によれば、肌老化の 80% は紫外線にさらされていることによるものであることがわかっています。)
引用元:National Library of Medicine「an You Reverse Sun Damage?」2024/2/21 から一部を意訳
2024年2月に掲載された記事ですが、肌老化について、80%の数字を載せたのは、これが初めてのようですが、日本の化粧品メーカーやメディアなどの記事と同様、数字の根拠については説明がありません。
NLMのホームページには、80%という数字に関連してつぎのような記事があります。
Clinical studies show that 50 to 80% of an individual’s life time ultraviolet (uv) radiation occurs before the age of 18 years.( 臨床研究によれば、個人が一生涯でうける紫外線 (uv) 量の 50 ~ 80% は 18 歳までに発生します。)
この記事は臨床研究が根拠となっており、しっかりエビデンスがある内容です。急性および慢性的に紫外線にさらされることで、皮膚がんの発生率が大幅に増加することへの警鐘をうながしています。
オーストラリアなどでは、子どもたちを紫外線による健康被害から守るために「サン・スマート」プログラムが導入されていますが、子どものときからの紫外線の照射量を減らすため。大人になってからの肌への影響を減らすためでしょう。
メラニン色素が紫外線から肌を守る
皮膚には、紫外線を含め、化学物質や細菌などから、お肌の内部をまもるバリアが備わっています。
紫外線によってメラノサイト(色素細胞)が刺激をうけ、メラニン色素が過剰に生成されることでシミができますが、このシミは紫外線から肌を守るはたらきをしています。
赤道付近などの紫外線の照射量が多い地域で皮膚の色が濃いのは、メラニン色素の多さが肌の内部を守っているからであって、肌老化ではありません。
メラノサイトは加齢とともに機能が低下し、数が減少していきますが、人種によるメラノサイトの数に差はないようです。人種による肌の色の違いは、メラノサイトから産生されるメラニン色素の量の違いによります。
白人の場合、メラニン色素の量が少ないため、紫外線によるダメージをうけやすく肌が老化しやすいと考えらます。
肌の色が濃いとシワができにくい?
少し話が逸れてきましたが、肌の色が濃いとシワができにくいとも言われています。これは、コラーゲンが関係しています。
白人の肌はもろいため、通常、エラスチンやコラーゲン繊維の構造の損失が早くから見られ、これがシワの原因となるようです。一方、肌の色が濃い人は、シワができるのが遅いと言われています。
まとめ
紫外線が肌にあたえる影響は非常に大きく、肌老化のバロメーターであるシミやシワの原因になっていることは理解できますが、はたして紫外線が老化の原因の8割、つまり大部分を占めているということでしょうか。
「紫外線が肌老化の原因の8割」との根拠に疑問を感じ、この記事を書きましたが、エビデンスが見つかれば紹介するつもりです。たぶん、見つからないと思いますが・・・。
年齢にともない、紫外線から肌を守るメラノサイトは減少していきますが、さらに美容成分である「コラーゲン」「エラスチン」「ヒアルロン酸」を産生する線維芽細胞の機能もおとろえていきます。
これは年齢にともなう機能低下であって、紫外線とは関係なくおとろえていきます。とはいっても、紫外線がシワやシミなどの肌老化を早めているのは間違いありません。
いずれにしても、肌老化が目立つようになる前に、アウターケアとインナーケアの両方から、自分の肌質や体質にあったスキンケアを心がけたほうがいいでしょう。