「グリチルレチン酸ステアリル」と「グリチルリチン酸2K」どう違う?
「グリチルレチン酸ステアリル」と「グリチルリチン酸2K」は、どちらも多くの化粧品などに配合される成分で、マメ科の植物・甘草の根から抽出されるグリチルリチン酸が原料です。
共通の効果効能がありますが、油溶性のグリチルレチン酸ステアリルにたいして、グリチルリチン酸2Kは水溶性であることが、化粧品の配合目的にも違いを与えています。
さらに、刺激性なども若干変わってきますので、化粧品を選ぶときの参考にしてください。なお、基本的な情報は、化粧品成分データベースの「化粧品オンライン」を参考にしています。
「グリチルレチン酸ステアリル」と「グリチルリチン酸2K」の特徴
「グリチルレチン酸ステアリル」と「グリチルリチン酸2K」は、原料となる甘草の根から抽出されるグリチルリチン酸からつくられますが、製造工程の違いによって油溶性と水溶性に分かれます。
- グリチルレチン酸ステアリル(油溶性)
・酸で分解し、アルコールを加えたもの - グリチルリチン酸2K(水溶性)
・カリウムを結合したもの
化粧品に配合するときは、「油溶性」と「水溶性」、それぞれの性質を生かして使い分けをしています。
グリチルリチン酸2Kを配合した化粧品の数は、グリチルレチン酸ステアリルを配合したものよりかなり多いのは、グリチルリチン酸2Kの”刺激緩和作用”によるものと考えられます。
「油溶性」と「水溶性」の違いについて
皮膚の表面は、皮脂によって外部刺激から守られています。皮脂は水溶性の成分をはじきますが、脂溶性のグリチルレチン酸ステアリルは吸収されやすいわけです。
一方、角質層より下の層は、水溶性のほうが吸収されやすく、ピーリングなどによって古い角質層が剥がれた状態では、水溶性であるグリチルリチン酸2Kの吸収がよくなります。
この油溶性成分と水溶性成分を混ぜるはたらきをしているのが、界面活性剤。石鹸は、界面活性剤の代表格ですが、乳液に使われている乳化剤も界面活性剤ですね。
効果の違い
「グリチルレチン酸ステアリル」と「グリチルリチン酸2K」の効果には、つぎのような違いがあります。
- グリチルレチン酸ステアリル
・ホスホリパーゼA₂抑制による抗アレルギー作用
・紅斑および浮腫抑制による抗炎症作用 - グリチルリチン酸2K
・ヒアルロニダーゼ活性阻害による抗アレルギー作用
・プロスタグランジンE₂産生抑制による抗炎症作用
・皮膚刺激緩和作用
働くメカニズムは違いますが、どちらの成分も「抗アレルギー作用」と「抗炎症作用」が期待できます。注目したいのは、グリチルリチン酸2Kの「皮膚刺激緩和作用」です。
化粧品の基材となるPG(プロピレングリコール)や洗浄力の高い界面活性剤、パーマ液などは、皮膚刺激を起こす可能性がありますが、この皮膚刺激を緩和する目的としてもグリチルリチン酸2Kが配合されます。
配合される化粧品類の違い
「グリチルレチン酸ステアリル」と「グリチルリチン酸2K」は、それぞれの特性を生かして、配合される化粧品類にも違いがあります。
- グリチルレチン酸ステアリル
・スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ハンドクリーム、ボディケア、日焼け止め、オイルクレンジング、洗顔料、入浴剤など - グリチルリチン酸2K
・スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア、メイクアップ、化粧下地、シート&マスク、日焼け止め、シャンプー、リンス、トリートメント、洗顔石鹸、洗顔料、ボディソープ、クレンジング、頭皮ケア、育毛剤など
グリチルレチン酸ステアリルは、抗炎症作用・抗アレルギー作用のほかにも、細菌発育阻止作用があるので、皮膚の消炎やカブレ防止以外にも、ニキビ予防などの目的で配合されています。
グリチルリチン酸2Kにも、ニキビや大人ニキビなどを防ぐはたらきがあり、刺激性が少ないので、敏感肌化粧水などの敏感肌化粧品にも使われています。さらに、医療では、急性や慢性の皮膚炎にも使われています。
グリチルリチン酸2Kには皮膚刺激をやわらげる働きがありますから、用途範囲が広いようです。
「グリチルレチン酸ステアリル」ステロイド同様の問題説について
「グリチルレチン酸ステアリル」は、「グリチルリチン酸2K」より作用が強く、ステロイドと似た構造をしているので、長期間使うとステロイド同様の問題が起こる可能性があるとの説明もあるようです。
しかし、「グリチルリチン酸2K」も、基本的にはステロイドと似た構造をしています。
「グリチルレチン酸ステアリル」は30年、「グリチルリチン酸2K」は20年以上の使用実績があり、ステロイド様作用などの重大な副作用は報告されていないため、安全性に問題はないと考えられています。
※参考:化粧品成分オンライン
「グリチルレチン酸ステアリル」アトピー性への使用に不安は?
「グリチルレチン酸ステアリル」について、アトピー性の方の使用を心配する声を聞くことがあります。
これについては、むしろ逆で、「グリチルレチン酸ステアリル」には、アトピー性皮膚炎や乾燥による肌荒れの改善効果が認められています。
その結果、やや改善以上で99人中78人(78.8%)の改善率がみられたとのこと。
※化粧品成分オンラインより
「グリチルレチン酸ステアリル」配合の【医薬部外品】
「グリチルレチン酸ステアリル」を配合した【医薬部外品】の一つに、フレイスラボ『シカクリーム』があります。
『シカクリーム』は、医療機関で処方される薬ではありませんので、即効性はありませんが、有効成分として「グリチルレチン酸ステアリル」のほかに、保湿力にすぐれる「シアバター」、整肌成分「イノシトール」などを配合しています。
この2種類の有効成分の働きによって、継続的に使用することで、肌荒れやにきび予防へのはたらきが期待できます。
どんなに安全と言われる成分でも、すべての配合成分がお肌に合うとは限りません。万一、お肌に異常を感じたら、直ちに使用を中止するのがスキンケアの大切なポイントです。