保湿に欠かせない「エモリエント剤」・その働きとおもな成分
保湿というと、水分を補うことがまずはじめに頭に浮かびますが、同時に忘れてならないのが、水分の蒸発を防ぐことです。
化粧品に配合され、水分の蒸発を防いでいるのがエモリエント剤で、保湿成分といっしょに配合され、肌を乾燥から守り、小じわを目立たなくするなどのはたらきをしています。
保湿に欠かせない「エモリエント剤」の効果とおもな成分
「保湿剤」と「エモリエント剤」の役割
保湿剤とは、皮膚に水分を与え、乾燥から守る吸湿性の高い水溶性の成分のことで、「モイスチャライザー」または「ヒューメクタント」と呼びます。
ヒューメクタントの成分には、尿素、グリセリン、乳酸、ピロリドンカルポン酸ナトリウムなどがあり、皮膚の保湿にかかわる水分や天然保湿因子(NMF)のバランス(モイスチャーバランス)を補うはたらきがあります。
ヒューメクタントだけを補っても、乾燥した環境や洗顔後では、すぐに水分が蒸散してしまいますから、油溶性の成分であるエモリエント剤で皮膚から水分が逃げないようにする必要があります。
エモリエント剤には、スクワラン、ホホバ油、大豆油、ブドウ種子油、グレープシードオイル、ラノリン、セラミドなど、非常に多くの成分があり、単に水分が蒸散するのをふせぐだけでなく、保湿性を兼ね備えたものや、角層のバリア機能を改善するものも少なくありません。
水分の蒸発をおさえるエモリエント成分
エモリエント剤の本来のはたらきは、皮膚にフタをすることで皮膚からの水分蒸発をおさえ、結果的に、皮膚に柔軟性やなめらかさを与えることを目的としており、おもな成分にはつぎのようなものがあります。
- オリーブ油
- スクワラン
- ミツロウ
- ホホバ種子油
- ミリスチン酸イソプロピル
- エチルヘキサン酸セチル など
水分を抱え込む力(抱水性)があるエモリエント成分
エモリエント成分のなかには、高い抱水性によって、高い閉塞性と皮膚上層の水分量を増加させる保湿性を兼ね備えた成分があります。
高い抱水性があるエモリエント剤として、おもにつぎのような成分があります。
- ラノリン
- ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/べヘニル)
- ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル) など
バリア機能を改善するエモリエント成分
皮膚のバリア機能を改善するはたらきがあるエモリエント成分として、おもにつぎのようなものがあり、バリア機能の改善目的で配合されることが多いようです。
- セラミド
- グルコシルセラミド
- ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル) など
これらの成分は、脂質が結合水を挟み込んで水分を保持することで、角質細胞間に層状のラメラ構造を安定させ、バリア機能を発揮すると考えられています。
肌が乾燥や寒さに長時間さらされると、バリア機能や保湿機能が低下し、ドライスキンなどの肌トラブルの原因になります。
セラミドは細胞間脂質の約50%を構成している成分で、このセラミドとの混合成分を塗布することで、細胞間脂質のラメラ液晶構造が強化され、その結果としてバリア機能の回復が促進されるようです。
まとめ
保湿クリームやモイスチャークリームによるスキンケアでは、つい保湿成分だけに注目されがちですが、肌の水分が蒸発してしまってはせっかくの美容成分がムダになってしまいます。
エモリエント剤は、皮膚から水分が蒸散するのを防いでうるおいを保持し、皮膚をやわらかくすることで、保湿成分とともに肌の健康を保ってくれるのです。
エモリエント剤には、水分が蒸散しないようにフタをするだけでなく、水分量を増加させる保湿性があるものや、バリア機能を改善するものがあります。
自分の肌質やスキンケアの目的に合った保湿クリームなどを見つけるためにも、保湿成分だけでなく、エモリエント成分にも着目してみてください。